エアポート
竹本祥子
エアポートのラウンジの窓辺で夕日を見る
サンセットランディング
唇でハミングしながら 或いはヒールの先でリズムを打ちながら
一人なのに
ここに居ると 恋人を見送る気分になる
ノースウイング搭乗口にあなたは消えて行く
もう二度と逢えないかもしれない
あなたの背中に顔をうずめて涙を押し留めるわたし
がいるような気がする
”アキラ”
どこにも行かないで!
モスコミュールを飲み干して タバコに火を点け
先細った顎を片手で支え
しっかりポールポジションをとって
わたしはアキラの背中に銃口を向ける
”オールザットジャズ”の口紅を薄い唇に塗って
輪郭をなぞりながらアキラの少しひきつる唇にキスをする
アキラは無表情
アキラ アキラ アキラ
”オールザットジャズ”は真紅じゃないからキスマークも
さまにならない
ノースウイング搭乗口にアキラの背中がいっぱい
誰がわたしのアキラかわからない
あなたはジャパニーズですか
わたしはジャパニーズです
銃口から ゆらゆらと煙が立ち昇る
乗らないのです
でもアキラといつか ノースウイング搭乗口に立っている
ような気がする
AKIRA MY LOVE