最終章
竹本祥子
見詰める掌に
ポツリと落下する
一滴の過去の残像
砂嵐のテレビ画面のよう
寝起きに忘れた夢のよう
セロハンテープで
それらを封印しながら
生命線を辿ってゆくと
深爪の鮮血が
人差し指から溢れ出す
真一文字に結ばれた口に
耳を澄ますと
ぽろぽろこぼれてくる
愚痴の数々
母を背負ってランチに行けば
丸呑みされる数々の愚痴
コップ一杯に注がれた
水で予防薬を
飲むことになっているらしいから
シートベルトをして
出発進行
忘れ物はない