ひなた野乃子のブログ

その日その日のつれづれ日記です。竹奈祥、竹本祥子で詩を書いています。

母の手(リュウゼツラン199号より)

母の手 

              竹本祥子

母が助手席で話す

 

わたしが小さい時

離乳食を

ぱくぱくよく食べていたこと

その離乳食は

固いお米から土鍋で炊くこと

ほうれん草や人参を

細かく切って混ぜ

食べさせたことを

包丁の手真似までしながら

 

母も もうすぐ九十歳

耳も遠くなり

カーラジオの

ボリュームを上げる

「楽しいね」

母の手が小刻みにリズムを打つ

 

今日も

ドライブスルーに寄って

好物のソフトクリームを

母の

しわしわになった手に渡す