ひなた野乃子のブログ

その日その日のつれづれ日記です。竹本祥子、祥で詩を書いています。

常識未満 (延命あるいはサボタージュより)

常識未満

              竹本祥子

 

スイギンジバクとか脳裏をよぎるが

現実のものとして腹の中に入ってゆかない

 

優しい新聞に(文言に)埋没する或いは浮上する

読めない文字

テレビを点けると同音異義語が発芽して

目の前で爆発する

げっぷが出る

放屁する

適齢期の女ではなかったから

懺悔は割愛された

 

ふいに首ねっこを掴まれて宙吊りにされる

女は

わたしだが誰も電話のベルを鳴らさない

七月の湿気で体中水滴だらけだ

 

 いつになったらわたしたちの生活は

 元通りになるのだろう

 

段々に積み重ねられた就職情報誌を片端から

丸めてゴミ箱へ

するとエンターキーが押されて

わたしの過去は抹消された

 

したら顔をした女は

人を殺める前に子を生したことがないと

口をへの字にして呟いたが

相手をしてくれるのは

いつも決まって過去の男だった

 

もう何もかもに嫌気がさして

幕を閉じようという空気が

喉まであがってくるが

仏壇で祖母に手を合わせると

半眼の魂がわたしを諫める

 

沈没することに怯える

小市民の女はやはり痛みに耐えるというのは

常のならわしだということを知る