非在
竹本祥子
小さく裂かれた水泡状の糸
欺かれた 己の純情
しろく しろく あれと
願う母の 幼い頃の笑みを
裏切って
ふくらすずめで 結ぶ帯
あかく あかく あれと
願った祖母から
ななめの 眼差し
己のここまでの時間が
線でないのは
恐れることだとしても
白衣を着ない ドクターが
三種類の錠剤を
処方しながら
カウンターテーブルで会釈する
冬の幻で聴いたアルトサックスで
満腹になった己の問題は
純情の非在
非在
竹本祥子
小さく裂かれた水泡状の糸
欺かれた 己の純情
しろく しろく あれと
願う母の 幼い頃の笑みを
裏切って
ふくらすずめで 結ぶ帯
あかく あかく あれと
願った祖母から
ななめの 眼差し
己のここまでの時間が
線でないのは
恐れることだとしても
白衣を着ない ドクターが
三種類の錠剤を
処方しながら
カウンターテーブルで会釈する
冬の幻で聴いたアルトサックスで
満腹になった己の問題は
純情の非在