ひなた野乃子のブログ

その日その日のつれづれ日記です。竹本祥子、祥で詩を書いています。

本日も晴天なり(継ぐより) 

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本日も晴天なり

                 竹本祥子

 

怠慢で眠りほうけて 鉛筆入れのファスナーの開け方を

思い出すまでちょっと砂糖を舐めて脳へ栄養素が届いたなら

めっけもんでピタリと3秒呼吸を止め 母の昼間の仕業

を思い出す 手も足もゴツゴツとしていて 毎日ジツノト

コロを紡いでいる

 これならイケルとメールでラブコール

百回以上は紡いでいるが 数えるのもだるいから君の

電脳マシーンに送信した数だけが頼りだから君に任せている

 今何と言った? そろそろ店じまいの時間になるから

きちんと買いだめして冷凍パックして冷蔵庫の冷凍室に

しまう

 洗顔したあとのまぬけな顔にコラーゲンを塗りまくった

ころあいを 見計らって明日は何時に とエステの予約の

電話を入れる 君をうたがってはいけない このコトバも

そのコトバも 純愛を水に薄めて金魚鉢に移し替えても

ノックはないから 腹をくくって肴をつまもう ノンアルコール

ビールでね 一缶250円 売れ行きが悪くても冷蔵庫

の真ん中に並べられている それにしても胃カメラを飲まなくては

君の真似をして 最新式的健康診断まで あと5日

ベージュの薔薇 (継ぐより)

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ベージュの薔薇

ベージュの薔薇

             竹本祥子

 

コバルトブルーが流れる

マゼンダが流れる

外血管も内血管も

体細胞全部が流れ出して

私はいなくなる

私の葬式は日常の中で営まれ

また 忙しい人々の忙しい毎日が流れる

人は自分の意志とは関係なく生まれ

ほぼ意志とは関係なく絶えてゆく

その中で何が変わる?

何がわかってゆく?

 

世紀の節目に立ち会っても立ち会わなくても

新聞の活字が読めようと読めまいと

天の日と 空気と  それぞれの社会と

人々の思惑が渦巻く

目の前に敷かれた道への不安に向かう

勇気があろうとなかろうと

花束は捧げられるから

なにげに受け取っておくれ

糸 (継ぐより)

             竹本祥子

 

もつれています

もつれたままに しておきましょう

 

ほどけたら

それきり

 

むすびめが わからないなら

その方がいい

 

まむすびにして

ポケットの中へ

 

わたし

いつから

にぎりしめていたのだろう

 

こんなに汗で びっしょり

糸なんて

とけてなくなる

 

今のうちに

今のうちに

 

もつれているうちに

 

はさみはいれないで

 

きっと痛いよ

 

大事にポケットの中へ

エアポート (継ぐより)

エアポート

               竹本祥子

 

エアポートのラウンジの窓辺で夕日を見る

サンセットランディング

唇でハミングしながら 或いはヒールの先でリズムを打ちながら

一人なのに

ここに居ると 恋人を見送る気分になる

 

ノースウイング搭乗口にあなたは消えて行く

もう二度と逢えないかもしれない

あなたの背中に顔をうずめて涙を押し留めるわたし

がいるような気がする

”アキラ”

どこにも行かないで!

 

モスコミュールを飲み干して タバコに火を点け

先細った顎を片手で支え

しっかりポールポジションをとって

わたしはアキラの背中に銃口を向ける

 

オールザットジャズ”の口紅を薄い唇に塗って

輪郭をなぞりながらアキラの少しひきつる唇にキスをする

アキラは無表情

アキラ アキラ アキラ

 

オールザットジャズ”は真紅じゃないからキスマークも

さまにならない

ノースウイング搭乗口にアキラの背中がいっぱい

誰がわたしのアキラかわからない

 

あなたはジャパニーズですか

わたしはジャパニーズです

銃口から ゆらゆらと煙が立ち昇る

 

わたしはエアバスが恐いから もう何年もエアバスには

乗らないのです

でもアキラといつか ノースウイング搭乗口に立っている

ような気がする

AKIRA MY LOVE

波に (継ぐより)

波に

             竹本祥子

 

波が立つ

向かうココロは 刃で ばさばさに切り取られる

遠くに 光る 発光物体

昔 運動場に白線で引いたように

自分の陣地を囲んで 守る

 

二十四時間 鳴らなかった携帯の着信音

今朝 鳴った訳は

淋しそうな朝焼けを 波が哀れんだから

津波なら 受けて立つものを

 

刻まれて 青く

流されて 白く

炎は 消せない

今からでも 間に合う

私に 毒蛇が棲むのなら

 

灯台の指す灯火が 明る過ぎるから

日が昇る朝が また来るから

このままでいよう

波に任せて

わたしの場合 (継ぐより)

わたしの場合

                竹本祥子

キイロイ声をあげてみた

でも ココロの穴は ふさがらない

 

かたまっているから

とかして

 

とけたら

また かためて

 

繰り返し 繰り返し

 

己が業に 嫌気がさし すっと 身をひく

 

突然の行動は 何かとスリリング

 

求心力と 遠心力と ひとのココロと

 

やさしさをヨロイにして 受話器から発信する

想い 強さ 弱さ 落胆 喜び

 

ココロが ほろびるのと

イノチが なくなるのと

どっちが先だろう

 

わたしの場合

メビウスの輪 (継ぐより)

メビウスの輪

                  竹本祥子

 

折り紙でつくった メビウスの輪

宙に

浮いている

 

導火線を貼りつけて

口火を

つける

いつまで 燃え続けるのだろうか

 

パチパチと 音をたてて 燃えてゆく

だのに その折紙は 燃えない

不燃物だ

 

燃えないゴミに その折り紙を分別する

 

宙に浮いた折り紙 の 執念

 

導火線だけが 燃えている

不気味な音がする

空気中で不気味だ

 

いや

きっと

幸福の

前兆だよ

 

だから メビウスの輪

鋏をいれよう